現代の家相学、安藤忠雄作「住吉の長屋」考察

住宅とは家族の生活の基盤であり明日への鋭気を
養う場所でありましょう。

建築家のル・コルビジェは「住宅とは住むための機械である」
と言いましたが、機能を追求したデザインを芸術の域まで
高めたコルビジェの住宅は確かに美しいものです。

住みやすいかといわれたら、そうとばかりは言えません。

現在の日本でも世界的な建築家の「安藤忠雄」は
住宅を多く設計していますが、彼の作品の多くは
RC打ち放しの仕上げで精緻な建築的妥協を許さない作品です。

初期の代表作である「住吉の長屋」は間取りの使い難さは
その最たるもので、雨の日には傘をささなければ便所には行けません。

不便な事は確かです。

けれどもこの建築は極限のRC造の狭小住宅の中に研ぎ澄まされた
豊かな空間が広がっていて建築作品としては素晴らしい作品です。

この吹抜を家相的に杓子定規に鑑定すれば間取りは大凶でしょう。

中央に大きな吹抜が設けられています。これを欠けとみなすと
「主人不在の相」となり大凶です。

占い師もどきの家相鑑定士は大凶と判断するでしょう。

しかし、中央の吹抜空間の1階はテラスとして豊に機能しています。

側壁の壁式構造の外壁は2階の屋上まで立上りセキュリティや
外部からのプライバシー确保も申し分ありません。

2階の吹抜は採光と通風の用を満たし充分機能しています。

言うなればこの中央の吹抜はこの住宅に無くてはならないものであって
間取りの豊かな空間をもたらす肝の部分です。

ちまたの建築家もどきが奇をてらうために安易に用いる吹抜とは
全く異質のものです。

事実、この住宅は1976年の竣工以来、
当時のままで現在も建ち続け施主も住み続けています。

施主が不在になったり破綻したりという経緯は全くありません。

私はこの吹抜を「欠け」とはみなしません。

吹抜部分は間取り的には家相的用途を意味付けられ構造的にも問題ありません。

「現代の家相」は占いの範疇を超えなければなりません。

建築学を専門に学び、少なくとも二級建築士の資格を取得している事が
最低の条件です。

そうでなければ間取りのリフォームや新築の企画を依頼者に指導する
などはもっての外です。

家相の相談の際は、まずはこれを確認してから依頼する事が肝要です。